FOOLS GOLD[デースケドガー] 1 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD[デースケドガー] 1



向かいのプラットフォームに女が立っている。一目で水商売とわかるワンピース。髪型はソバージュでチャカカーンみたいにぼさぼさだ。なつかしきチャカカーン。とても80年代な彼女に僕は心奪われ、目が離せなくなった。
彼女に白人が近づいてきて、声をかけた。道を尋ねているわけではなさそうだ。遠すぎて聞き取れないが、ナンパしているのだろう。彼女は英語で話しかけられ、なかば困った様子で「YES」と答えた。それしかボキャブラリーがないに違いない。するとその白人は彼女の手を取り強引に歩きはじめた。おい。ちょっとまてよ。僕が心の中で叫ぶと同時に、彼女は綱引きでもしてるかのように腰を落とし、7センチはあるかと思われるハイヒールで踏ん張りつつ「NO!」と叫ぶ。その白人は一瞬驚いた顔をしたが、手を離しその場から離れてしまった。
彼女が「NO」という単語も知っていて、僕は少しほっとした。
それが彼女とのファーストコンタクト。
(正確には僕が一方的に眺めていただけだけれども。)

あれから半年が経ち、今、彼女が目の前にいる。別に「いい」仲になったわけではない。目の前の彼女とカードで勝負するのだ。ゲームはあのデースケドガー。彼女に好意を持ってはいるが、今となってはしかたがない。自分の認識力、想像力、いや全精力を懸けて立ち向かわなければならない。僕だって、まだ若いし未来がある(輝かしいかどうかは別にして)こんなところで人生を終わりにしたくない。きみには悪いけど勝たせてもらうよ。

この小部屋にいるのは3人だ。僕と彼女とディーラー。部屋の上には監視カメラがいくつもついている。きっと金持ちのヒヒオヤジ連中が僕たちを見て喜んでいるのだろう。ゲスな趣味だ。
ディーラーは僕ら二人に順に目配せするとカードを配り始めた。
いやな汗が背中を流れた。
デースケドガーが始まった。

つづく


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