FOOLS GOLD[デースケドガー]4 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD[デースケドガー]4

 

 彼女も僕を見て、微かな笑みを浮かべた。口元のほくろが僕を誘ったように見えた。
 ニューオーダーが好きなの?目の前にいる彼女に向かって声を掛けた。10Mは離れている相手に対して話し掛けるつもりで声を掛けたのだが、その刹那、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」のイントロのギターリフが流れ、ロックキッズ達の咆哮によりかき消された。彼女は一瞬ダンスフロア(と呼べるほどの大きさではない。4人踊る人がいれば、いっぱいになる。それでもピーク時にはその5倍の人数が犇めき合う。)に意識を向けたが、僕の方に向き返ると今度ははっきりと微笑み、僕の首に腕をまわし耳元で、踊りましょう、と囁いた。
 
 店に入って1分で知り合いになった僕らは、ハイネケン片手に店の隅で、音楽について語り合った。彼女はそんなにロックフリークというわけではなく、たまたま友達に連れられて来たようだ。その友達も今ではここで知り合った男と話をしている。そして自分の好きな曲で、ここで流れてもおかしくないかなと思える曲をリクエストしたのだそうだ。要するに退屈していたのだ。
 「Blue Monday」が流れた。
 「ニューオーダーが好きなの?」今度は聞き取れる声で尋ねた。
 「そんなに知らないの。この曲が好きなだけ。高校生の頃、よく聞いたわ。ディスコで流行していたから」
 「イアンカーティスの話を知ってる?」
 僕は気に入った娘がいると必ずする物語がある。イアンと残ったメンバーの物語だ。彼らの話はシリアスだけれども単に暗いお話にならないので、女の子を口説くにはもってこいだった。(それは彼らが辛い過去を乗り越えたから、そして極上のポップソングを作り続けているから)
 「知ってるわ。昔の恋人が好きだったの」
 そんなふうにして僕らは知り合いになった。
 
 出会って15分だ。

 つづく

第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)