FOOLS GOLD[デースケドガー]5 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD[デースケドガー]5

 


 それから僕らは出会ったばかり男と女がするたわいもない会話をつづけた。どこからきたの?なにしているの?うんぬん。ここらへんの会話で脈があるかどうかは大抵察しがつく。内容よりも、答え方とか微笑む回数とかタバコを持つ手の位置だとかほくろの位置だとかで。その点彼女の態度は良好だった。ただファッションがちょっとけばいのが気になったけれども。(実際彼女はキャバ嬢だった。いまどきのキャバ嬢はたいてい私服がそれっぽくないのに。)

 彼女はたばこを吸い終わると、僕にガムを持っているかと尋ねた。
 「ないよ。でも欲しいなら一緒に買いに行こう」
 「でも一度店から出たら入れるかしら」
 「大丈夫。また一杯注文すればいいだけだから。」
 「そうね」
 彼女は自分の友達の方を一瞥して答えた。友達は楽しそうに隣なりの男と歓談していた。

 外に出ると夏の匂いがした。彼女のヒールが高いのに気付く。くちびるがふっくらとしている。口元にほくろがある。髪型はフラッパーというのだろうか。上条淳士の「SEX」でモデルの女の子と同じ髪型だ。そして胸が大きい。歩き出すと彼女は僕の腕をとった。

 コンビニの中に入ると少し違和感を持ち、どこか普通でない気がしたが、その理由はすぐに理解した。お店の中には僕らとレジ係り以外に5人客がいて、その内3人は立ち読みをしていた。普通のよくあるコンビニの一風景だけれども、違うのは3人とも読んでいる本が少年ジャンプではなく「サブ」だったことだ。そして残りの二人は30代の男とどうみても中学生くらいの男の子のカップルであった。僕らは腕を組んでいたが、彼たちは手を繋ぎ仲睦まじくしていた。さすが2丁目だな、と感心した。彼女も同じことを感じているようだった。

 「ねえ。あとつけましょうよ」
 小声でサブカップルをアゴで指し示しながら僕にささやいた。
 僕は正直なところ、そんな下世話なことはしたくなかったが、
 ①折り角いい展開のところ、彼女の気持ちを折るようなことはしたくない。
 ②たしかに、面白いかもしれない。
 ③当然ホテル街に行くだろうから、彼女を誘いやすいかも。
 ④もしかしたら最初から彼女はその気で、その提案をしたのかも。『あとはあなたが一押しすればいいだけよ』と。
 僕は①から④まで0.1秒で論旨の展開をし、その解釈を採用した。
 つまり微笑みながら「いいね」と答えた。

 「ところで、自己紹介がまだだったね」僕は言った。
 「俺の名前は濱 マイク」もちろん冗談だ。
 彼女は微笑みながら言った
 「私の名前はチャカカーン」
 心臓の音が1オクターブ高くなった。なんで僕の彼女に対する第一印象がわかったのだろう?
 見透かされている気がした。

 出会って30分だ。

 
 つづく


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)