FOOLS GOLD[デースケドガー]6 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD[デースケドガー]6

 

 夜の11時といってもここは新宿の繁華街、通りに人が多くてもよさそうなものだが、なぜか今日は人影がまばらであった。新宿2丁目はさして高いビルもなくネオンもどことなく煤けた印象だ。ここは今でも昭和の世界だった。
 僕らは前の二人とちょうど路地の間隔を保ちながら、尾行していた。途中で年上の男が若い方の肩に腕を廻し、軽くキスをした。尾行を始めてから、僕の鼓動は大分早くなっているようだ。これは隣で魅力的な女の子(というような年齢ではないだろうけど)と腕を組んでいるからというよりも、やはり探偵の真似事をしている気分の高揚からくるものだろう。子供の頃、かくれんぼをすると、必ずなぜか下腹がもやもやした気分に似ている気がした。
 「なんだかドキドキするわね。」
 彼女も少し興奮している様子だ。

 15M程前を歩いていた二人が左へ曲がったので、僕らは心持ち早歩きになり、追いかけた。角を曲がる瞬間、くぐもった音が聞こえた気がした。僕らは、わざとらしくならならよう気をつけながら、おそるおそる角を曲がった。

 男が一人道端に倒れていた。側には二人男が立っていて、一人は何か光るものを手に持っていた。ドスだった。前を歩いていた若い方の男が、蒼白になりながら眼を見開いて倒れた男を見つめていた。あたりの音は消え、時間の感覚が無くなってしまったようだ。一瞬の出来事だとは思うが、僕ら二人は立ち止まったまま若い男とドスを持って立ちすくむ男を見つめ、その二人は倒れている男を見つめていた。誰も声を出さなかった。倒れている男の周りにじわじわと黒いものが広がっていった。ドスを持った男が顔を上げ僕らの方をみた。初めて見る顔だ。ということは倒れている男は若い男と一緒に歩いていた男なのだろう。その男は僕と目が合うと、何度も同じ間違いを犯す生徒を諭す小学校の先生みたいに、悲しそうなどこかやりきれない顔をして微妙に首を振った。背中にいやな汗が流れた。
 逃げようと思い、振り返った瞬間、脇腹に激痛が走った。バットかなにか長いもので殴られたのだろう。前から振り下ろされたので、ドス野郎とは別の男だ。体をくの字に曲げて脇腹を手で押されると、次は後頭部を殴られた。前に倒れる瞬間、男の靴が見えた。それが記憶に残る最後だった。僕は気を失った。

つづく
第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)