デースケドガー旅行記1 | FOOLS GOLD 

デースケドガー旅行記1

 


これはデースケドガー政府観光局から募集された旅行記への投稿です。ここで書かれている僕はFOOLS GOLDの僕とは基本的に同一人物ではありません。

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昨年の夏、僕の身に起きた事について書こうと思う。今となっては3万年前の話みたいだ。


デースケドガーに単身旅行に来て1週間が過ぎた。こんな観光地に一人で旅行に来るなんて僕くらいであろう。事実毎朝黒服に「お連れ様はいつおいでになるのですか?」と聞かれる。その度、僕は適当に答えていた。
僕はこの一週間どこの観光スポットも廻らなかった。あたりまえだ。一人で観光地めぐりをするやつはいない。一緒に廻る予定だった相手はどこか他の男と家を出て行ってしまった。旅行の1週間前に。
朝、カフェでモーニングを食べ、午前中はホテルのプールでひたすら泳ぐ。そして午後は部屋で本を読み、夜は近くのバーで眠くなるまで酒を飲んだ。ホテルにもバーはあるが、外へ出た。ホテルにずっと居過ぎると逆に変な眼で見られるから。
会社には前もって2週間の長期休暇を貰っていた。キャンセルしてもよかったのだが、妻が行きたがっていたデースケドガーだったので、一人で傷心旅行をすることにした。ささやかな復讐のつもりかもしれない。


デースケドガーに来て一週間、毎日晴れている。おかげさまで、僕は小麦色に日焼けした。今日も午前中はプールで1km泳いだ。幾分気になり始めた腹も、こころなしか引き締まってきた気がする。悪くない。気分が落ち込んでいる時はせめて外見を健康的にみせるのが大事。僕の持論だ。


部屋の窓からは、眼下にプール、そして南国特有の樹木とその先に浜辺が少しと海が見える。ここから景色を眺めていると御伽の国に来たみたいだ。


女の子がプールサイドを歩いていた。北欧かどこかの娘だろうと僕は踏んだ。透き通るような肌の白さだ。この高い窓から眺めてもそれは息を呑むほどの素晴らしいからだだった。トップアスリートが持つ緊張感がそこにはあった。水泳の選手かもしれない。プールにいるのは彼女一人だけみたいだった。


突然、彼女が倒れた。ゆっくりとスローモーションのように。
そして倒れたまま動かなくなった。


僕はとてつもなく喉が渇き、冷蔵庫からビールを取り出した。
一口飲んだだけで、サイに体当たりをくらったみたいに、睡魔が襲ってきた。
僕は、故障した電話器のように、うらぶれた路地に見捨てられた三輪車のように、深く深く眠りについた。


いやな夢をみた。仕事から帰宅すると誰もいない。テーブルの上に置手紙がある。あなたと一緒にいるのは疲れました。などなど。問題は現実でも同じことが僕の身に起きたことだった。眼を覚ますとあたりは夕暮れになっていた。寝汗をかいたのでシャワーを浴びた。


バスから出ると、窓から景色をみた。そこにはチョークであの娘の体がいたずら書きみたいに象られていた。


間違っている。チョークで書かれたそれはまるで出来の悪いキースヘリングみたいだった。違う。彼女は街を歩けば、誰もが振り返り、口笛を吹くような素敵な娘だったんだ。そんなはずない。


僕がどんなに叫んでも、誰も聞いてくれない。地球は廻り続ける。僕はそんなさまをここから手をこまねいてただ眺めているだけだ。


この高い窓から。



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