FOOLS GOLD[デースケドガー]7 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD[デースケドガー]7

 

  声が聞こえた。水の中で聞く音みたいに何を喋っているのかよく聞きとれない。身体が揺れている。エンジン音みたいだ。頭がひどく痛む。車に乗っているのだろうか?身体は横たわっている。上下感覚がない。まだスイッチがうまく繋がらない。BNCプラグとRCAプラグを無理やり接続しようとしている。無理だ。あきらめよう。また気を失った。


 「おい。起きろ」
  誰かが何かを喋っている。
 「おい。起きろ。おい」
  誰かが何かを喋っている。
 「おい」
  誰かが何かを。誰だ?何だ?
 目を開けた。頭がひどく痛む。焦点があわない。歪んだ鏡を見ているようだ。子供の頃遊園地にあった鏡の家。迷路になっていて迷子になりそうだった。出口の近く、歪んだ鏡があり、実際より大分痩せて見えたり、太って見えたり、波打って見えたり。鏡の家。なぜそんなモノを連想したのか。そんな存在を意識したのは小学生以来だ。記憶の繋がりがおかしい。頭がひどく痛む。
 「いきなりで悪かったな」目の前の大きな机の向こう側から声がした。
 「判るか?」
  僕は首を振った。「水」一番必要なもの言葉にした。誰かがテーブルの上に無言でグラスを置いた。おまたせしました、とは言ってくれなかった。どうでもいいことだけれども。僕はグラスに入った水を一気飲みした。やっと意識が身体とかろうじて繋がったみたいだ。BNCはBNCへ、RCAはRCAへ。映像信号がスルーアウトし、目に見えている光景がそのままの形で頭の中の像となった。
 「気分は?」
  朝の4時に部屋長から無理やりたたき起こされた全寮制の中学生の気分だ。いささか長い比喩を使って相手にそういった。
  話しかけた相手は、笑ってくれた。いかにもヤクザの親分な笑い方だった。きっと歯を磨く時もヤクザの親分な磨き方をするのだろう。要するに見るからにやくざの親分だった。もちろんその推理は当たっていた。ここはやくざの事務所だ。
  時計を見た。長針も短針も真上を指していた。昼か夜かわからない。たぶん昼の12:00だろう。殴られてから大分時間が経った気がする。時間を確認するためポケットから携帯を取り出した。0:00だった。気を失っていたのは1時間たらずだった。


  それが、1時間前の僕。


つづく

第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)