FOOLS GOLD[デースケドガー]8 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD[デースケドガー]8

 

 まだ頭がひどく痛んだ。後頭部に手をやるとカーゼが充てられていた。ご親切にも誰かが治療してくれたみたいだ。僕は頭を軽くさすりながら、自分の居場所を確認していった。
 自分はソファーに座っている。二人掛けの皮製のソファーだ。目の前にテーブルがあり、上には大理石でできた灰皿と卓上ライターがあった。灰皿には1箇所だけ不自然にどす黒くなっていたが、気にしないことにした。
 テーブルの向こう側には一人掛けのソファーが二つ。もちろん皮製だ。今は誰も座っていない。そのまた向こうに大きなマホガニー製の机があり、男が座っていた。こいつが親分だ。
 そして僕から見てその右側に男がたっている。ドスの男だ。ドス男は灰皿を見るような目で僕を見ていた。僕にあまり興味がないのだろう。僕も負けずに灰皿を見るような目で見返してやった。それでどうなるわけでもないけれど。
 親分の左側には女性が二人たっていた。チャカカーンとその友達だ。友達はこちらを楽しそうに眺め、チャカカーンは下を向いていた。
 僕が座っている左斜め後ろにこの部屋の入り口があるが、その前には正座をしている男がいて、その顔は紫色に腫れ上がって痛々しかった。誰かに大理石の灰皿でしこたま殴られるとああなるのだろう。Tシャツは血だらけだった。背格好から先ほどの男の子だろうと判断した。
 その正座をしている男の子の傍で、一人いかついボウズ頭が立っていた。親分以外でこいつだけ初顔だった。

 これで全員だった。登場人物が勢揃いした。ドスで刺されたオヤジがいないが、僕の知った事ではなかった。彼には彼の災厄があるように僕には僕の災厄があった。そしてまだましなことに僕は彼ではなかった。他に人はいなかった。金田一幸助が帽子を脱いで、「動かないで、この部屋に犯人がいます」とも言わなかった。犯人がわかりきっているこの世界では彼の存在価値は低い。僕にだってそれくらいの推理はできる。

 いかにもなヤクザの親分がいる、いかにもなヤクザの事務所だった。こんな事務所はもう「代紋TAKE2」とか哀川翔の映画で何べんも見てきた。翔さんがどこからかやって来て助けてくれることを期待したが、とりあえず無理そうだった。きっと忙しいのだろう。端から端までステレオタイプな事務所で、壁に毛筆で「仁義」とか「男樹」とか額縁が壁掛けしてあれば完璧だな、と思い部屋を見渡したらやっぱりあった。でも良く見るとちょっと違った。相田みつをだった。
 
 『相田みつをかよっ!』三村も忙しいだろうから、代わりに自分でつっこみを入れた。
 
 もちろん心のなかで。


つづく

第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)