FOOLS GOLD〔デースケドガー〕18 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕18

二人のカードが開示された。僕のカードは「8」だ。彼女のカードはなんだ?開けられたカードが目に飛び込んでくる。すぐには計算できない。200Vの電圧が僕の思考回路を揺さぶっている。それは彼女も同じはずだ。僕は簡単な足し算ができずに、苛立ちながら彼女を見た。

彼女の顔が歪んでいた。栗色の髪の毛がさらに逆立っていた。その顔をみて、もう一度彼女のカードを見た。ハートの4とクローバーの3、足して「7」だ。僕の勝ちだ。

勝負に勝ったうれしさと安堵感とこれからまた指を切断する恐怖感と彼女がこれからあじあう300Vの電圧への同情と僕にもすぐにその番が来るだろうというあきらめと恐怖感とそんななんやかやが一緒くたに僕の気持ちを揺さぶり、僕は咆哮した。こんなに腹の底から叫んだのは初めてだった。

 

 

全てのカードが開示された。彼女のカードは「ハートのJ、ダイヤの4、ハートの4、クローバーの3、ハートの8」デースケが「8」、ドガーが「7」、デースケドガーが「8」

たしかにこの目ならドガーを選択されても「NO」とはいえない。拒否権を発動しても比較して自分の目がそんなに良くなるわけでもない。それに彼女は女性だ。自分の身体を傷つけることは本能的に避けるはずだ。

彼女のカードの並びを見て、自分の運気を感じた。ギリギリで勝った。拒否権まで購入して勝負に勝てなかったら無駄に指をなくす。最悪2本イカレテしまうところだった。そして彼女のカードが自分のだったらと思うとぞっとした。比較的目のいいカードで同じように負けていただろう。これがデースケドガーというゲームの本髄だ。

 

 

ディーラーがまたしても優雅に淀みなく我々にプレゼントを贈った。僕には例のきゅうり切断機をくれた。お返しに右の小指を差し出した。これで2本目だけれども、この痛みに慣れる事はできない。燃えるような熱さを感じた。

 

 

そして彼女の電圧は300Vに上げられた。

 

 

現在、入手した金額、500万円。失ったもの、両手の小指。そして僕の電圧200V

 

 

つづく