FOOLS GOLD〔デースケドガー〕11 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕11



 移動の車の中で僕はこのルールを書いた切れ端を眺めながら、ポイントを整理していた。車は当然ベンツのSLで運転手は初顔だった。助手席に少年が座り、後部座席には僕を真中にして右にドス男、左にボウズ頭が座った。前の車にはきっとチャカカーンと親分が乗車しているはずだ。暑苦しい連中に囲まれて嫌気が指したが今はこのルールが持つ顔、本質を理解しようと努めた。
 「なあ。賭金の決済はいつ行われる?全勝負が終了した後か?それとも一勝負毎か?」
 僕は右隣りのドス男に向かって尋ねた。見かけと先ほどのやり取りと車に座った位置からドス男が組のナンバー2と僕は踏んでいた。ドス男は少し心外そうな顔をして答えた。
 「一勝負毎だ。少し考えれば分かるだろう?」
やはりそうか。それでないとショーのエンターテイメント性が薄れるからであろう。
 「一千万は最初にくれるのか?」
 「先刻、無事に2勝負やり通したらと説明したはずだ。オヤジはお前の事を買っているようだが、意外と間抜けだな。そうだな。説明してやろう。お前は現金を持っていない。最初の勝負で負ければ、文字通りお前の身体で支払うことになる。そして賭金の半額が現金で充当される。つまり百万ずつ賭けて一勝一敗すれば、お前は百五十万手にするって訳だ」
 「そして小指を失い、100Vの電圧をいただく。なあ100Vってどんなもんなんだ?」
 「殴られたくらいの衝撃だそうだ。ちなみにアメリカの死刑囚には州によって違うが2,000~6,000Vの電圧をイスにかけると聞いている」
 2,000V。確実に殺すのに2,000V必要だとすれば、きっとその半分の1,000Vくらいしかもたないに違いない。すると全部で十敗しかできないということだ。前任者や少年が逃げ出す気持ちがわかった。
 「逃げようなんて考えないことだ。すぐにズドンといくだけだ。」左のボウズ頭が僕の腰に拳銃を押し付けた。
 「電流は?どれくらい流れる?」
 「そんなもん関係ねえだろ?」左のボウズ頭が答えた。バカな答えだ。だが本質を突いている。僕は勝負に勝つこと。負けても十敗まで。これが本質だ。負けて指を失うことよりも、100Vの電圧こそがこの勝負のカギとなるのだ。

 「最初の相手は?」
 「うるせいな。少しは黙っていろ」左のボウズ頭がまた拳銃を押し付けてきた。
 「我々も知らない。到着してからだ」右のドス男が答えた。
 「なぜ彼女があと一人の選手に選ばれた?」
 「オヤジが決めた事だ。その理由までは聞かされていない」
 「最後の質問だ。俺をバットで殴ったのはこのボウズ頭か?」
 「そうだ」ドス男が喋り終わると同時に力の限り右手を振り回して拳をボウズ頭の鼻柱に決めた。ボウズ頭はくぐもった声を出しながら鼻を抑えたが、すぐに拳銃の柄で僕の脇腹を殴った。僕は痛みで身体を折り曲げた。
 「止めろ」ドス男が制した。おかげさまで2発目は来なかった。
僕はそれほど苦しかったわけではないが無理やり嘔吐して車とボウズ頭の足を汚してやった。ささやかな抵抗だ。
 
 「もう一つ質問。何処に向かっている?」喘ぎながら質問をした。
 「アカサカだ」ドス男が答えた。
 赤坂。ドス男はカタカナで答えた気がした。いかにも東京アンダーグラウンドな場所だ。気持ちが緊迫感で押し潰されそうになった。それをほどく為にもう一度ボウズ頭の足にゲロを吐きかけた。


 そんなわけで、僕はこの奇妙な世界でこれから体と精神を削り取ることになる。
 そして5枚目のカードが配られ、最初の勝負が始まった。
 (ざわ)


 つづく

第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)