FOOLS GOLD〔デースケドガー〕14 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕14



 燃えるような痛みが指先に走った。左小指の第二関節部から切り落としたのだが、一番痛いのは切断面ではなく、既に繋がっていない指先だった。僕は痛みに絶えるため、唇を噛み締めた。切断するやいなや、どこからともなく氷の入った洗面器がそばに置かれ、僕はその中に手を入れた。皮膚の感覚がおかしくなってしまったようだ。どこからどこまでが痛みで、どこからどこまでが熱いのか、または冷たいのか、既に分からなくなっていた。
そのあとガーゼとワセリンを使って簡単な治療が行われた。この程度で音をあげさせないよう主催者の暖かい気配りだった。
 ありがたい。少なくとも血が止まったおかげでカードは持てる。

 執行人はディーラーだった。あくまでクールにそして優雅に指切断機に力を入れた。まるでスタンドアップマジックのショーみたいだった。僕が傍観者だったら拍手さへしたかもしれない。それほど動作に淀みがなかった。ただ残念なことに僕は傍観者ではなかった。拍手をしたくても、左手の自由が利かない状況だった。そしてこの先僕は一生きれいな拍手ができない人間になってしまった。別に拍手が上手でもヘタでもどうでもいいことだけれども。
 切断して初めて、自分が自分の左小指のことをとても好きだったことに気が付いた。

 治療もディーラーがしてくれた。いたれりつくせりだ。
 やれやれ。彼がなんでもしてくれる。
 ひととおり治療をすますと、またもクールな目で僕を刺しつつ、告知した。
「では、いきます。」
 白い手袋をして両手の甲を前に出して言えば、まるで白い巨塔の財前みたいだった。宴会芸で使えるかもしれない。

 イスに電流が流され、100Vの電圧がかけられた。

 お尻の下で衝撃が走った。たしかに最初は殴られたあるいは蹴られた感覚に似ている。ただそれは一瞬の感覚だった。すぐに口の中が唾液でいっぱいになった。アルミホイルの味がした。奥歯に力が入る。何か重い物を押し付けられているようだ。髪の毛が逆立つ。小指の痛みから気がまぎれてちょうどいい、とはとても思えなかった。

 これこそがデースケドガーだった。


 つづく


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)