FOOLS GOLD〔デースケドガー〕20 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕20

 

 

この時点で3勝2敗だったが、僕は自分の勝利を確信していた。それは、前回の大事な勝負に勝てたからではなく、それをギリギリの差でものにしたからでもなく、自分の指を犠牲にしてまで手にした勝利だからでもなく、そのため彼女の電圧が上がり彼女はもう正常な判断ができなそうだからではない。彼女が僕を見て泣いていたからだった。たぶん彼女は自分を罰しているのだ。今、彼女は僕を見つめ涙している。それは電気の所為ではなく、僕をこの世界に引き込んだことへの責念の想いからだ。あるいは、この世界の住人となった僕への同情からだ。

だけど。だけど、と僕は思う。それは君の問題であって、僕の問題じゃない。僕の問題はとにかく生きのびること。相手が誰とか相手の気持ちとか立場とかそんなことは瑣末なことだ。僕は自分にそういい聞かした。そうでないとこんどは自分が彼女に同情してしまう。同情してしまえば、こんどは自分が穴に落ちてしまう。僕は後ろを振り向く。そこには暗く深い穴が待ち受けている。その穴はあまりにも深いので距離感が掴めない。その深さを知ろうと思い覗き込めば、落ちてしまうのだ。それはとてもとても簡単に。

 

 

手許に5枚のカードが配られた。今回も是が否でも勝ちにいくつもりだ。彼女も自分が限界にいることが分かっているのだろう。6勝負目はレイズ合戦になって、賭金は500万円に吊り上った。

今回のカードは「ダイヤのJ、スペードの4、クローバの5、ハートの2、ダイヤの7」なかなかのカードだ。「5、2、7、J、4」と並べるか、あるいは「5、J、7、2、4」にするか。どちらにしても「7」になるところを宣言されれば、また拒否権を購入するつもりだった。彼女が拒否権を購入することはないだろう、この点でも僕に有利だった。このゲームで決める。僕はいきこんだ。

  

 

つづく

  

 

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