FOOLS GOLD〔デースケドガー〕24 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕24

ブラックアウト。

空軍のアクロバットチームが戦闘機でループしたりスクリューしたりして機の性能や操縦の技術を見せ付ける。スクリュー時には極度の重力が頭にかかり血が昇り、パイロットの視界は赤く染まる。この状態がレッドアウトとという。逆にループ時には重力が足にかかり、頭の血が極端に薄くなり、パイロットの視界は暗くなる。この状態がブラックアウト。プリントのネガフィルムみたいに、平面で光りのない世界。

 

「おい、そろそろ起きろ」

ドス男が僕を揺さぶった。この男に起こされるのは何度目だろうか?まるで十年来の友人と思い違いをしてしまう。まだまだゾウのように眠りたかったが、なんとか自分を奮い立たせ、身体を起こした。眠っている間に、ドス男が灯りを消してくれたらしい。部屋は暗かった。

「今、何時だ。それと灯りを点けてくれ」

「3時になったところだ。次の勝負は3時半から始まる。10分前には席に着かなければならない。」

「それから、灯りは既に点いている。見えないのか?」

鼓動が強く響き、早くなった。ドス男が喋っている方向へ目を凝らしてみた。人の姿はおぼろげに感じ取れる。だが顔も服装もわからない。自分の手のひらを見てみた。なんとなく手のひらがあることはわかる。試しにひとさし指のだけ伸ばしてみた。一本だか二本だか三本だか区別できなかった。照度でいえば0.005Lux。夜、星明かりのみの視界状況。

「見えない。これでも勝負を続けなくてはいけないのか?」

「もちろん。完全に見えないわけではないだろう?ただ部屋を最大値に明るくするようにする。デースケドガーではよくあることらしい」

やれやれ。こんな状態でカードを扱わなければいけないのか。僕は溜息をついた。とてもとても深く。あまりに深い溜息なので、目が悪くなっていなかったらきっと目に見えたに違いない。

 

 

つづく

 

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