FOOLS GOLD〔デースケドガー〕26 | FOOLS GOLD 

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕26

正直に言って、自棄になっていたのかもしれない。僕はもっと目をこらしてカードの数を理解すべきだったのかもしれない。大金や自分の身体が賭けの対象になっているこのゲームで僕は文字通り盲目に勝負しているのだ。それが、勝負事として正しいことなのか自信が無かった。正しいという言葉は御幣があるな。それが自分にとって有利に働くか否かわからないということだ。僕はファーストベットの100万円をディーラーに放り投げながら、そのことについて考えを巡らせた。今回がいくら勝負になるのかは分からない。相手がどれくらいまでレイズアップするのか。彼も状況はそう変わらないだろう。決して、楽ではないはずだ。どちらにしても早く勝負を終わらせたいに違いない。さすれば、この勝負のレートはインフレ化するだろう。そんな高レートを盲目で勝負している。だが、今の視界ではどちらにしても、はっきりとカードを見極めることはムリだ。それにうまくやらないと僕のキズ(ほとんど目がみえない)がばれてしまう。キズを相手に知られれば、負けたも当然だ。無用に時間稼ぎをされるかもしれない。あるいはサマを使うかも。ヤクザが仕切る賭場で、サマは普通ご法度だ。ただギャンブルの世界ではこう考える場合もある。「ばれないサマは技術である」と。要するに見抜けない方が間抜けなのだ。そういう意味でも僕はまさに崖の淵に立たされていた。だからこそ、盲目に自分の手を決めたのだ。

僕は自分の考えが無限にループしていることに気付いた。おい!しっかりしろ!お前が考えることはただひとつ。どのようにして生き延びるかだ。それこそがこのゲームの本質、サバイバルゲームという本質なのだから。「-にレイズ」サバイバルゲームという、、、、、、、、。まずい。聞き逃した。彼はいくらにレイズしたのだろうか?ディーラーの前には幾ばくかの黒い塊があるような気がする。いくらレイズしたのか、訊ねようとして思い留まった。普通、ズクは100万円で一束だ。2本か3本か4本かそれくらいなら、ディーラーの目の前にある金の山を見れば分かる。それを聞き返すのは、野暮というものだ。だが、いくらレイズしたのか分からなければコールしようがない。今回は勝負を降りるか。いや。待て。こんな風に毎回勝負が推移すれば、確実に自分は破滅する。もう自分には後がないのだ。はっきりと認識しろ。そう。もう自分には後がないのだ。

 

僕は持ち金の全て、500万にレイズアップした。彼がそれ以上賭けたかもしれないが、その時はどちらにしても現金がないのだから、残金に相当する指を教えてもらえばすむことだ。こんな状況だ。引き算ができなくても怪しまれないだろう。僕はもう一度相手の方を見据えた。

 

今度は彼が考える番だった。

 


つづく



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