Ｉ’ｍ Ｗａｉｔｉｎｇ For Ｔｈｅ Ｍａｎ

これまでにも何日か帰ってこないことはあった。3日家を空け、やっと朝方帰ったかと思えば、風呂に入って仮眠をとって、朝に出勤していく。そんなことが度々繰り返された、この２，３年。２ヶ月前にも居なくなったことがあった。１週間ほど。その時は結局よくいく雀荘でみつかった。
もう耐えられないと彼女は思う。何度も何度も反芻してきた思い。結論はでている。旦那は病気なのだ。そして病気だという自覚症状がない。浮気しているかも、と疑うこともある。たぶん違うだろう。女性に対して潔癖とういわけではない。女性に対して使う金があれば、旦那は違うことに使う。ギャンブルだ。

ただ今回は今までと少し違うかもしれない。まず会社にも出勤していない。金も金を入手する手段もないはずだ。携帯も繋がらない。そして、いつもの雀荘にも顔を出していない。

彼女にとって唯一の救いは子供だった。そして子供は父親を求めている。
「いっぱい電話すれば、戻ってくるよ。だからいっぱい、いっぱい電話して」

The Bends

さすがに、１週間も風呂に入らないと体が痒くなってくる。髪の毛もアブラっぽくなり、べトつく。まるでポマードをべっとり付けているオヤジだ。まあ年齢的にはオヤジと呼ばれるに十分なのだが。おまけに、まだ７月だというのに連日猛暑だ。満喫でとなりに座ったやつとか、パチスロでとなりに座ったやつとか、マージャンでとなり（上家・下家）にすわったやつとか、電車でとなりに立っていたやつが、少し顔をしかめてこっちを見る。その度こっちは気恥ずかしくなる。悪いね、少し運が悪かっただけだよ。その分こっちは話題のネタを提供しているのだからチャラにしてくれ。

それにしても日差しが強い。今年は暑い夏になるかもしれないな。学生の時にもたしか暑い夏があった。僕は六本木の和風レストラン「瀬里奈」でバイトしていて、仕事始めの夕刻に、必ず僕は六本木交差点の角にあるビルを見上げるクセがついていた。そこにはデジタル表示で温度計があったのだけれども、連日３５℃くらいを表示し（夕方なのに！）ひどい日は４０℃を越していた。きっと車の排気ガスのせいで気温が上がるのだろう（道路はさほど広くないのに車の数が多い）たぶん六本木交差点は日本で一番暑い場所のひとつだ。六本木ヒルズなどない今は昔の話。

話しを戻そう。とにかく日差しが強い。１週間も同じスーツでヨレヨレ。ヒゲももちろん伸ばし放題。だけど僕は暑さを感じない。無意識に両腕で体を抱えてしまう。そうしていないとどこかに吹き飛んでしまうから。僕はいま、まさに、人生のガケップチに立っていることがわかる。その状況をまるで他人事のように感じる時と強く打ちのめされる時が交互にやってきて、その所為でとても不安定なのだ。

明日は今日の続きだろうか？それとも別？

Ｔｈｅｒｅ Ｉｓ Ａ Ｌｉｇｈｔ Ｔｈａｔ Ｎｅｖｅｒ Ｇｏｅｓ Ｏｕｔ

きみは、きみの家族や知人の捜索願いを出したことがあるかな？
あるいは、きみが、きみの家族や知人から、捜索願いを出されたことがあるかな？

そういった状況に陥った場合の多くは、旅先で遭難したり、犯罪に巻き込まれたり、自然災害で行方不明になっていたりと、たぶんだいぶ、本人も本人の回りもシリアスな状況なのだろうと思う。けれども、もちろんそうでない場合もある。シリアスな問題に見えない状況。いや、違うな。はたから見てると、どーしても喜劇にしか見えない状況。あるいはエンターテインメント。ＴＶ番組の家族探しとか。

でも当事者たちにとっては、やっぱりシリアスなのだけれど。

それが僕の物語。
どこにたどりつくかわからないけど。

「決して消えない光がある」
いつかその場所を目指して。

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