FOOLS GOLD  -3ページ目

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕14



 燃えるような痛みが指先に走った。左小指の第二関節部から切り落としたのだが、一番痛いのは切断面ではなく、既に繋がっていない指先だった。僕は痛みに絶えるため、唇を噛み締めた。切断するやいなや、どこからともなく氷の入った洗面器がそばに置かれ、僕はその中に手を入れた。皮膚の感覚がおかしくなってしまったようだ。どこからどこまでが痛みで、どこからどこまでが熱いのか、または冷たいのか、既に分からなくなっていた。
そのあとガーゼとワセリンを使って簡単な治療が行われた。この程度で音をあげさせないよう主催者の暖かい気配りだった。
 ありがたい。少なくとも血が止まったおかげでカードは持てる。

 執行人はディーラーだった。あくまでクールにそして優雅に指切断機に力を入れた。まるでスタンドアップマジックのショーみたいだった。僕が傍観者だったら拍手さへしたかもしれない。それほど動作に淀みがなかった。ただ残念なことに僕は傍観者ではなかった。拍手をしたくても、左手の自由が利かない状況だった。そしてこの先僕は一生きれいな拍手ができない人間になってしまった。別に拍手が上手でもヘタでもどうでもいいことだけれども。
 切断して初めて、自分が自分の左小指のことをとても好きだったことに気が付いた。

 治療もディーラーがしてくれた。いたれりつくせりだ。
 やれやれ。彼がなんでもしてくれる。
 ひととおり治療をすますと、またもクールな目で僕を刺しつつ、告知した。
「では、いきます。」
 白い手袋をして両手の甲を前に出して言えば、まるで白い巨塔の財前みたいだった。宴会芸で使えるかもしれない。

 イスに電流が流され、100Vの電圧がかけられた。

 お尻の下で衝撃が走った。たしかに最初は殴られたあるいは蹴られた感覚に似ている。ただそれは一瞬の感覚だった。すぐに口の中が唾液でいっぱいになった。アルミホイルの味がした。奥歯に力が入る。何か重い物を押し付けられているようだ。髪の毛が逆立つ。小指の痛みから気がまぎれてちょうどいい、とはとても思えなかった。

 これこそがデースケドガーだった。


 つづく


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)




FOOLS GOLD〔デースケドガー〕13




  ディーラーはクールだった。彼はニコリともしなかったし、白い目で僕を見ることも無く、もちろんつっこみなどもってのほかであった。まるでカサブランカみたいにハードボイルドなディーラーは冷静にそれぞれに対して異存がないか尋ねた。
満州式では相手の宣言に対し拒否をすることができる。ただし拒否権の購入には自分の身体を代価にしなければならない。僕は最初の勝負から選択の岐路に立たされた。
 1.最初の勝負はとても重要である。
 2.ドガー以外なら負けは無い
 3.ただし勝っても負けても小指が無くなる。労多くして得るものが少ない勝負となる。
 4.自分の指を切断することを自ら決断する勇気がない。
 5.ドガーのママでも「7」なので決して弱い数字ではない。
いろいろ考えたが4番を選択した。結局のところ僕はヘタレでビビリなのだ。
彼女も拒否せず受け入れた。

 「オープン ユア カード」ディーラーはNHK英語口座の兄ちゃんみたいな巻舌でクァルドと発音した。いやみな奴だ。僕は昔から外来語をうまく発音する奴が嫌いだった。偏見かもしれないが。

 僕のカードはもちろん「7」だ。
 彼女が1枚目と5枚目のカードを捲った。「スペードの8」と「クローバーのA」だった。

 視界がグニャリと音を立てた。僕の目に映るものは全て歪んで見えた。水の中かから聞く音みたいに全ては遠くの出来事みたいに感じられた。いまさらながらに、自分に降りかかった災厄を恨んだ。言うまでも無く僕の負けだった。また頭が痛みだした。

  彼女のカードを全て開示した。「スペードの8、スペードの9、ダイヤの7、クローバーの5、クローバーのA」だった。僕は素早く計算し、驚愕した。僕がこのカードだったら、順番はともかくAを真中にして8と7で挟む。そうすればデースケとドガーが「9」と「8」デースケドガーが「4」となり3分の2で強い目となる。彼女の並べ方ではデースケドガーこそ強い目だが、3分の2で弱い目となる。僕はもう一度彼女の瞳を見つめた。あいかわらず彼女の瞳には何も答えはなかった。そのことが余計に恐ろしく感じた。

  どこからともなく、指の切断機が現れた。ジャパネット○かたできゅうりを便利にカットする調理器具みたいだった。自分の顔が歪むのがわかった。叫び出しそうになった。声にならない咆哮だ。僕はチャカカーンを恨んだ。ジャパネットの社長も恨んだ。ニューオーダーも恨んだし、相田みつをも恨んだ。泣き叫んで哀願すれば許して貰えるかもしれない。誰か偉い人が自分に同情し助けてくれるかもしれない。この窮地から救ってくれるかもしれない。だが心が崩れるその境界線で踏み留まった。よく考えろ。そんな都合の良いことは絶対にない。まともな人間はこんな勝負のギャラリーにはならないし、来ている客は全て、他人の痛み、もしくは精神の崩壊する様を楽しみにしているのだ。

  僕は指切断機に左手の小指を差込み、目を瞑った。


  つづく


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)




デースケドガーに関する考察その2 著名人に聞く④



ピエール瀧に聞く

●今回は「ドーデガス」のピエール瀧さんです。「ポンキッキーズ」から「ミラクルさん」と前から音楽以外の活動が目立つピエールさんですが、最近の音楽活動を聞いてみたいと思います。


「まずは1,000ドデガ」


●??? 卓球さんとは連絡とりあったりしているのでしょうか?


「ハズレですね。ではいっちゃってください」


●(>_<)ん~~~


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)


FOOLS GOLD〔デースケドガー〕12




 5枚目のカードが配られた。
 (ざわ)
 最初の相手が彼女だったのは偶然だった。彼女がどんな気持ちで僕を嵌めたのかはわからない。でも今となってはそんなことは瑣末なことだ。見世物になった僕らはどちらも立場に差異はなかった。僕は相手が誰だろうと第一に生還することを考えねばならない。できれば最小限の犠牲で。

 最初の勝負が始まった。勝負事はなんでもそうだが重要なのは「手」ではない。配牌やカードの内容やダイスの出目ではなく、押し引きがポイントとなる。「手」はあくまで偶然の産物なのでそこに優劣を組み込んでも意味は無い。勝てる時にどれだけ強く押せるか、または、劣勢の時にどれだけ自制できるかが勝敗を分けるのだ。そして必ず勝負所、いわゆる天王山とういものがある。それを見極め、獲得すること。それがギャンブルの大原則だ。そして言うまでも無く、最初の勝負は最重要ポイントのひとつだった。

 僕のカードは左から「クローバーの6・ダイヤの9・スペードのA・ハートのJ・ハートの8」だった。僕は一目見て安堵感を覚えた。まずまずの手だ。頭から「9・8・A・6・J」と並べれば相手が「ドガー」を宣言しても僕の数は「7」になる。「デースケ」か「デースケドガー」ならば僕の数は「9」だ。この場合「8」と「6」の位置はセオリーとして逆にはならない。統計的に言っても、宣言の割合はデースケが34%、デースケドガーが36%、ドガーが30%となっている。つまり宣言されにくいところに弱い数字を置くのがセオリーだ。だがもちろんセオリーを過信してはならない。セオリーはあくまでセオリーでしかないのだから。

 僕は真中の「スペードのA」を開示して前述の順番に並べた。
彼女は「ダイヤの7」を開示していた。ラッキーセブン。願掛けのつもりかもしれない。
 (ざわ ざわ)           (ざわ ざわ)
    (ざわ ざわ)           (ざわ ざわ)
 周りがざわめき始めた。きっと僕ら二人の外馬に乗っているに違いない。僕は極度の緊張を感じ、手のひらの汗を拭った。

 「まずはファーストベットを」超一流のホテルマンのようなかいがいしさでディーラーが聞いた。彼女は札束(ズク)をディーラーに渡した。僕は持ち合わせがないので、紙の切れ端に「小指」と書いて差し出した。
 (ざわ ざわ)           (ざわ ざわ)
 ギャラリーは僕に負けて欲しいのだろうがそうはいかない。僕はなんとしてもサヴァイヴしてみせる。自分の気持ちを奮い立たせるため、自分の頬を両手で張った。

 「レイズ オア ステイ?」ディーラーが尋ねると僕も彼女もステイと答えた。いくら手持ちがあるか知らないが、彼女もできるだけ平穏に終わらしたいはずだ。さすれば両手の指を何本も失わなくてもすむかもしれない。僕はこの時そんな希望的観測に身を浸した。

 「何を選択しますか?」ディーラーはまず彼女に聞いた。普通のデースケドガーではまずバンカーに聞く、そしてプレイヤー、最後にもう一度バンカーに変更がないか尋ねる。今回は両方ともプレイヤーなので単にレディーファーストなのかもしれない。
 「デースケ」彼女は答えた。
 僕は顔色が変わらないよう気をつけた。そしてそのままでいてくれと心のずっと奥底で祈った。
 「何を選択しますか?」
 「ドガー」僕はセオリーの逆を突いた。彼女がセオリーを知っていればドガーの位置に一番弱い目を置くはずだ。彼女の想いを探ろうと、彼女の顔やしぐさを凝視した。彼女は先刻から無表情で相変わらず淋しそうな瞳をたたえていて、そこからはなにも読み取ることはできなかった。

 「変更しますか?」頼むからそのままでいてくれ。だが祈りむなしく彼女は変更すると答えた。
 (ざわ ざわ)         (ざわ ざわ)
 周りが少しざわめいた。デースケドガーは基本的に心理戦である。なるべく与える情報は少ない方が良い。これは基本原理だ。情報が少ない序盤戦はあまり変更しない方がセオリーとされている。そのためギャラリーがざわめいたのだ。
 「ドガー」
 しまった。彼女はこちらに合わせてきた。僕のドガーは「7」だ。これで負ける可能性が出てきた。手のひらに汗が出てきた。バットで殴られた所がまた痛み出した。

 「変更しますか?」今度は僕に尋ねた。
 「変更します」
  (ざわ)        (ざわ)
      (ざわ)        (ざわ)
 変更に変更を重ねる。これもセオリーにない。僕は良くない風を感じていた。ドガー以外なら負けはなかった。さらに最初に僕がドガーを宣言していなければ、彼女はドガーに変更しなかったかもしれない。頭のケガした部分がズキズキと脈打っている。夏だというのに少し寒気もしてきた。僕は緊迫感で胃がせり上がってくる思いがした。
 
 少しでも緊張を解しリラックスしようと、僕は冗談を言う事にした。
    (ざわ)        (ざわ)
  (ざわ)        (ざわ)
 
「デースケドガーでドーデガス!
 
    (ざわ)        (・・・・・)
       (・・・・・)        (・・・・・)
 
誰も笑わなかった。
      
 (・・・・・)       (・・・・・)
  (・・・・・)        (・・・・・)
 
冷たい汗が背中を流れた。



つづく


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)

デースケドガーに関する考察その2 著名人に聞く③



スピードワゴン 小沢君に聞く


●今日は特別ゲストとして小沢君にお越しくださいました。最近結構TVに出ているらしいね。あまりTV見ない俺でも何回か見るよ。あいかわらず打っているの?


「いやぁ○○ちゃんには敵いませんよ。いつだって卓上を支配しているのは○○ちゃんですよねぇ?」


●いやいや、そんなことないって(お義理で否定している風に)


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)

FOOLS GOLD〔デースケドガー〕11



 移動の車の中で僕はこのルールを書いた切れ端を眺めながら、ポイントを整理していた。車は当然ベンツのSLで運転手は初顔だった。助手席に少年が座り、後部座席には僕を真中にして右にドス男、左にボウズ頭が座った。前の車にはきっとチャカカーンと親分が乗車しているはずだ。暑苦しい連中に囲まれて嫌気が指したが今はこのルールが持つ顔、本質を理解しようと努めた。
 「なあ。賭金の決済はいつ行われる?全勝負が終了した後か?それとも一勝負毎か?」
 僕は右隣りのドス男に向かって尋ねた。見かけと先ほどのやり取りと車に座った位置からドス男が組のナンバー2と僕は踏んでいた。ドス男は少し心外そうな顔をして答えた。
 「一勝負毎だ。少し考えれば分かるだろう?」
やはりそうか。それでないとショーのエンターテイメント性が薄れるからであろう。
 「一千万は最初にくれるのか?」
 「先刻、無事に2勝負やり通したらと説明したはずだ。オヤジはお前の事を買っているようだが、意外と間抜けだな。そうだな。説明してやろう。お前は現金を持っていない。最初の勝負で負ければ、文字通りお前の身体で支払うことになる。そして賭金の半額が現金で充当される。つまり百万ずつ賭けて一勝一敗すれば、お前は百五十万手にするって訳だ」
 「そして小指を失い、100Vの電圧をいただく。なあ100Vってどんなもんなんだ?」
 「殴られたくらいの衝撃だそうだ。ちなみにアメリカの死刑囚には州によって違うが2,000~6,000Vの電圧をイスにかけると聞いている」
 2,000V。確実に殺すのに2,000V必要だとすれば、きっとその半分の1,000Vくらいしかもたないに違いない。すると全部で十敗しかできないということだ。前任者や少年が逃げ出す気持ちがわかった。
 「逃げようなんて考えないことだ。すぐにズドンといくだけだ。」左のボウズ頭が僕の腰に拳銃を押し付けた。
 「電流は?どれくらい流れる?」
 「そんなもん関係ねえだろ?」左のボウズ頭が答えた。バカな答えだ。だが本質を突いている。僕は勝負に勝つこと。負けても十敗まで。これが本質だ。負けて指を失うことよりも、100Vの電圧こそがこの勝負のカギとなるのだ。

 「最初の相手は?」
 「うるせいな。少しは黙っていろ」左のボウズ頭がまた拳銃を押し付けてきた。
 「我々も知らない。到着してからだ」右のドス男が答えた。
 「なぜ彼女があと一人の選手に選ばれた?」
 「オヤジが決めた事だ。その理由までは聞かされていない」
 「最後の質問だ。俺をバットで殴ったのはこのボウズ頭か?」
 「そうだ」ドス男が喋り終わると同時に力の限り右手を振り回して拳をボウズ頭の鼻柱に決めた。ボウズ頭はくぐもった声を出しながら鼻を抑えたが、すぐに拳銃の柄で僕の脇腹を殴った。僕は痛みで身体を折り曲げた。
 「止めろ」ドス男が制した。おかげさまで2発目は来なかった。
僕はそれほど苦しかったわけではないが無理やり嘔吐して車とボウズ頭の足を汚してやった。ささやかな抵抗だ。
 
 「もう一つ質問。何処に向かっている?」喘ぎながら質問をした。
 「アカサカだ」ドス男が答えた。
 赤坂。ドス男はカタカナで答えた気がした。いかにも東京アンダーグラウンドな場所だ。気持ちが緊迫感で押し潰されそうになった。それをほどく為にもう一度ボウズ頭の足にゲロを吐きかけた。


 そんなわけで、僕はこの奇妙な世界でこれから体と精神を削り取ることになる。
 そして5枚目のカードが配られ、最初の勝負が始まった。
 (ざわ)


 つづく

第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)

満州式デースケドガー ルールとレート




1)ルール

①賭金のミニマムは100万円
②バンカーとプレイヤーの優位性はつくらない。すなわち宣言はどちらも1回訂正 する機会を与えられる。また真ん中のカードは必ず最初に公開しなければならない。プレイヤーとプレイヤーの勝負である。
③賭金の半額をハウスが用意する。勝負に負けても自己負担は半額である。
④1回勝負に負けると100Vの電圧がイスを流れる。以後負ける度に、100Vずつ加算される。
⑤どちらかのプレイヤーが戦闘不能になった状態で勝負終了とする。敗者がそれまでに増えた金額は没収される。
⑥相手の宣言に対し1勝負に1回だけ拒否権を購入することができる。その購入には下記レート表に記載したどれかが必要となり、現金にての換算はできない。勝負終了後に即座に決済する。

2)レート

①小指、、、、、、、、、、、、、、100万円 (足の指はそれぞれ50万円プラス)
②薬指、、、、、、、、、、、、、、150万円
③中指、、、、、、、、、、、、、、200万円
④人差し指、、、、、、、、、、、 250万円
⑤親指、、、、、、、、、、、、、、300万円
⑥片耳、、、、、、、、、、、、、、250万円
⑦睾丸1コ、、、、、、、、、、、、500万円
⑧瞳1コ、、、、、、、、、、、、、500万円
⑨乳首(女性のみ)、、、、、、、100万円
⑩他、、、、、、、、、、、、、、、相談による   


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)


FOOLS GOLD〔デースケドガー〕10



 それからドス男は今回の顛末とこれからのことを一気に捲くし立てた。今夜これから、日本中の大きな組の親分から政財界の大物、有名な芸術家、大物芸能人などが集まる非合法な賭場が開かれること。今回この組がホストとして仕切り役であること。デースケドガーの予定選手が急に二人逃げてしまったこと。急遽、あらたな選手を探さなければならなかったこと。そのなかでオヤジと僕が網にかかったこと。少年がオヤジに真相を告げて一緒に逃げ出そうとしたので、オヤジを刺した事。そして少年がボコられたこと。僕は勝負をしない限りは逃げられないこと。ただ勝敗に関わらず無事に2試合全うすれば報酬として1,000万円受け取れること。

 「満州式のデースケドガーを知っているか?」
 僕は満州式のデースケドガーを知っていた。昔、学生のころ図書館で調べたことがあった。旧日本陸軍が満州で起こした人体実験。それが、この東京アンダーグラウンドで今も行われていることも噂では知っていた。小金を持つと人はそのお金の増減で一喜一憂する。大金を持つと人は他人の破滅する様を眺め満足する。趣味の悪い下衆な親父連中を楽しませるためにそこでショーが行われるのだ。そう。満州式デースケドガーは正確な意味でギャンブルではない。ショーなのだ。
 「だいたいは」
 「よろしい。うちの組からあと一人――を出場させることにする。残りの二人は――組が用意することになっている」そういって先ほどからずっとうつむいているチャカカーンを指した。
 「それとこれが今回のハウスルールとレートだ。よく見ておけ」そう言うと1枚の紙切れをテーブルの上に置いた。


 つづく


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)

デースケドガーの遊び方 How to play The Dayskit Dagger




 いらっしゃいませ。カジノ カサブランカへようこそお越しくださいました。
わたくしKikkiがゲームアドバイザーとして当カジノの紹介とゲームを案内させていただきます。

 当カジノの歴史は古く、その原型は16世紀後半まで遡ります。大航海時代スペイン人と英国人がこの地に降り立ち、19世紀にフランスに統治されるまで、ここカサブランカを発展させたと言われております。当時は住民の憩いの場としてカジノなるものが始まったとされておりますが、詳しいいきさつは民明書房館から発刊されております「カジノの歴史」をご覧ください。

 さて、当カジノでは、カードゲームからルーレット、スロットマシーンにいたるまで様々なゲームをご提供しております。まずはキングオブカードゲームのバカラからご案内いたしましょう。
 バカラはイタリア語で「ゼロ」という意味です。ゲームの基本はプレイヤーとバンカーに配られた2枚ないし3枚のカードの合計数を比較して、端数が9に近い方が勝つというシンプルなものです。3枚目のカードを引くか引かないかには2枚目までの合計によって厳密なルールによって定められております。それは別の表を参照してください。
 当カジノではビックバカラとミニバカラの二つのテーブルをご用意しております。ビックバカラでは1勝負毎に使ったカードは破り捨てます。ミニマムの掛け金は200$です。ミニバカラでは5セットのカードをディーラーシューケースに入れてゲームを進行します。ミニマムは10$です。どちらのテーブルでも、あなたはプレイヤーかバンカーにチップを張るだけです。ルール上、統計的にバンカーの方が約1.3%有利になりますが、バンカーが勝った時はバンカーに賭けた分の5%をコミッションとして頂く事になります。この5%がいわゆるゲーム代となるわけです。

 次にデースケドガーです。今ではこのゲームが遊べるのはこの北アフリカと中近東だけになってしまいましたが、20世紀初頭までは世界でポーカーやブラックジャックに並ぶ人気があったとされております。
 ルールはバカラに似ておりまして、このゲームもプレイヤーとバンカーに分かれて勝負します。それぞれ最初に5枚ずつカードを配り、相手が指定する2枚を足して端数が9に近い方が勝ちです。まずそれぞれに賭けた金額の大きい方が代表者になりカードを引くことが出来ます。配られた5枚を自分の前に縦に並べます。その際、プレイヤーは真ん中の1枚を開示して並べなければいけません。バンカーからまず「Dayskit」「Dagger」「DayskitDagger」のどれかを宣言しますと、プレイヤーのカードはそれぞれ「2番目と真ん中のカード」「真ん中と4番目のカード」「1枚目と5枚目のカード」となります。次にプレイヤーも同じように宣言するわけですが、バンカーは真ん中のカードを開示しません。またバンカーは前言を撤回し、1回だけ宣言を変更してもかまいません。この多少の優位性により統計上バンカーの勝率は約3%有利になっており、バンカーが勝った時はバカラと同じように5%のコミッションを頂く事になります。
 デースケドガーでは1勝負毎にカードを破り捨てていきます。読みの要素が大きいので1勝負に約15分、時には30分かかる事もあります。掛け金のミニマムは500$です。それからハウスルールとして勝負が終わると全てのカードを公開することになります。これでお互いの選択基準などを推理していくわけです。

 次に、ブラックジャックのテーブルにいきましょう。BJでは、、、、、

第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)



FOOLS GOLD〔デースケドガー〕9



「さて」椅子から目の前のソファーに移動して、親分が語りかけてきた。
「さて、こちらも時間がない。質問は二つにしてくれ。本当の事を答えるとは限らないがな」
二つ?なぜ二つなのだろう。正直、ここはどこだとか、お前は誰だとか、俺をバットで殴ったやつは誰だとか、ドスで刺されたオヤジはどうなったかだとか、なぜチャカカーンがそこに立っているのかだとか、少年は何故ボコボコに殴られたのかだとか、今となってはどうでも良かった。分からない方がいい場合もあった。二つ?いろいろ考えたが一つしか思い浮かばなかった。
「何の用だ?」その唯一の質問を尋ねた。
親分は満足そうな笑みを浮かべながら答えた。
 「すばらしい。簡潔にして的を射ている。余計なことはしゃべらない。頭がいい。肝も座っている。そして臆病で慎重だ。おい、お前はなかなか見込みのあるやつを捕まえたな」最後はチャカカーンに対して語りかけていた。「それで、もう一つの質問は?」
 「どうして、『相田みつを』?」額縁を指差しながら質問した。別に相田みつをが好きなヤクザがいてもいいが、そんなヤクザとは知り合いになりたくなかった。偏見かもしれないが、相田みつを好きのヤクザなんて理解できない。もちろんどんなヤクザとも知り合いになんかなりたくなかったけれども。
 こんども親分は笑いながら答えた。
 「これか?気になるか?おい!」
 ドス男が相田みつを裏に引っくり返すと力強い毛筆で『魁』と書かれた文字が出て来た。反射的に『男塾』と心のなかでつぶやいた。
 「いつもはこうしているんだがな。素人の客人が来る時は額をひっくりかえすのさ。素人さんを緊張させない俺のアイデアだ。良い案だろう?」
 良い案かどうかは知らないが少し安心した。
 「さて、最初の質問の答えだが」
 「これから大きな賭場が開かれる。我々はその選手を探している」
 賭場?カジノ?
 麻雀や手ホンビキ、バカラなら本職に依頼するはずだ。こんな手の込んだ事までして、見知らぬ素人にやらせる種目とはなんだ?いやな予感がした。背中に冷たい汗が流れた。

「種目はデースケドガーだ」そこまで言うと、親分はドス男に続きを喋らせた。


 つづく


第 2 回 SEO コンテスト (新潟・スマトラ頑張れ!!)